2018/01/20
八丈島自転車ツーリング
去年の暮れですが、伊豆諸島の八丈島を自転車で旅してきました。
少し前に伊豆大島を自転車で走って離島を旅する面白さを知り、調べてみたら八丈島も見どころが沢山ありそうなので是非行ってみたいと思っていました。
これまでの八丈島に関する知識と言ったら、かって島流しの地だったこと、名物のくさやの干物、そして某漫画の有名なギャグ「八丈島のキョン!」くらいです。
八丈島は東京都の本州側から287kmの南方にあり、二つの火山(八丈富士と三原山)がくっ付いたひょうたんの形をした島で、面積は山手線の内側とほぼ同じ。
今回走ったルートです。画像クリックで詳細なルートが見れます。
今回のツーリングの目的は、島一周道路(約45km)を走り、二つの火山の山頂まで歩きも含めて登ること。
もちろん、史跡や観光施設も巡り、島の名物料理を食べ、日帰り温泉も多いので入浴も楽しみ。
竹芝客船ターミナルからフェリーに乗り、前夜の22時30分に出航して翌朝8時50分着の10時間20分の長旅。
二段ベットでほとんど寝ていましたが、後半、波が荒くなり船が揺れ軽い船酔いになりました。
予定どおりに8:50に底土港へ寄港。空はどんよりと曇り風が強いです。(以下の画像は二度クリックで大きい画像が開きます。)

伊豆大島よりもずっと南の方なので関東よりは暖かく過ごしやすいと思っていましたが、調べてみたらさほど気温は変わらず、島なので風が強く、しかも雨が多いという気候。
底土港を出たら島南東部を時計回りに、八丈一周道路のうねうねと続くつづら折りの峠道を登って行きます。
約7.5km勾配を登り展望台のある登龍峠(標高312m)へ来ました。
絶景です。
八丈小島、八丈富士から市街地まで見渡せます。

峠を越えたら一気に下り、末吉という集落へ出て、近くの八丈島灯台を見物した後、「末吉温泉 みはらしの湯」へ。
八丈島には7箇所の温泉が有り、「みはらしの湯」は太平洋が見渡せる露天風呂が特長です。
独特の匂いと色で塩分の強い温泉にゆったりと浸かりました。

温泉を出たら再び坂道を登ります。島の東部はアップダウンが多いので疲れます。
坂の途中にある「名古の展望台」から見下ろす絶景。

再度下ったら今度は山の方へ急坂を登って、地元の物産品を販売し地熱を利用した温室がある「えこ・あぐりまーと 農産物直売所」を覗き、その先のもうもうと水蒸気を吐き出している、八丈島の電気の約40%を供給している「八丈島地熱発電所」へ。
地熱発電に関する資料を展示した、付属の「八丈島地熱館」を見学しました。

八丈一周道路から細い道を海岸方向に下り、森の中の遊歩道を10分程歩くと、滝を裏側から眺められる観光名所の「裏見ヶ滝」があります。

昼食には遅い時間になり、食事が出来る店も開いて無さそうなので、ネットで調べて近くの「古民家喫茶中之郷」へ。

古民家の雰囲気が良く、内部には炬燵席や囲炉裏もありました。
ホットドッグとコーヒーと明日葉スコーンを注文。
明日葉とはセリ科の植物で、八丈島で多く生産され様々な食物の食材として利用されています。
その後、八丈島に伝わる草木染めの絹織物工房「黄八丈めゆ工房」や、徳川時代の奉行の屋敷跡「服部屋敷跡」を見学。
島東部をぐるりと回り大坂トンネルを抜けるとジャンプ台のような高架道路があり、一気に見晴らしが開けました。

トンネルの展望台からは、暮れ始めた八丈小島と八丈富士が見渡せます。

段々薄暗くなっていく市街地を抜け、本日の宿「リードパークリゾート八丈島」へチェックイン。
翌朝の写真ですが、赤い屋根の2階建ての建物とヤシの木がいかにも南国リゾートホテルの雰囲気です。

夕食の会席料理が凝っていて種類も多く、八丈島名物島寿司(ネタが予めタレに浸けてあり、ワサビの代わりにからしを使っている)があり、特に島の牛乳を使ったミルクしゃぶしゃぶと牡蠣のヨーグルトソース掛けが絶品でした。離島でありながら、これだけの食材がよく揃えられるものだと感心。
八丈島二日目の朝から、いよいよ標高854.8mの八丈富士への登山です。
昨日と違って暖かく天気が良いので絶好の登山日和になりました。
七合目までは自転車で登り、そこから火口と山頂までは歩きになります。
見上げる道路の先に八丈富士が聳えます。

七合目に八丈富士をぐるりと一周する鉢巻道路がありますが、そこまでの4kmの登りが急勾配できつく、汗びっしょりになり、何度も休息しつつ1時間かかりやっと登りました。
鉢巻道路を右回りに300m程進んだ場所から、自転車を置いて歩きでの登山開始。
ヒルクライムで体力を使い果たしていたので、火口までの1,280段の石段の登りが悲惨でした。
脚が上がらず何度も立ち止まり、後から元気に上がってくる方たちに追い抜かれました。

約1時間の登山で火口外周までようやく到達。

火口内部は窪んでいて樹木が生い茂っています。まるで南米のジャングルにでも有りそうな風景です。

さらに火口外周を進み山頂を目指します。
強風の吹く断崖沿いの道は足場が悪く怖いです。

15分ほど火口外周を歩いて標高854.8mの八丈富士山頂到達。

山頂から見渡す絶景です。飛行場と市街地を挟んで明日登る予定の三原山が見えます。

山頂を下りたら、再び自転車に乗り鉢巻道路を右回りに一周回って「八丈富士牧野・ふれあい牧場」へ来ました。
広い牧草地に牛が放牧されていて、景色が良いです。

八丈富士を下って八丈島空港へ寄り、空港内のレストランで、明日葉が練り込まれた緑色の麺を使い、さらに明日葉がスープに浮かんでいる「明日葉ラーメン」を食べました。
空港の反対側にある広大な敷地の「八丈植物公園」へ。

園内は、熱帯植物をはじめ様々な植物がエリアごとに植えられ、八丈島の自然や生き物・産業を紹介した「八丈ビジターセンター」や、色鮮やかなハイビスカスやブーゲンビリアが見られる温室がありました。
そして、居ました八丈島の「キョン」!

キョンは元々中国東部や台湾が生息地のシカで、山上たつひこの漫画「がきデカ」のギャグ「八丈島のきょん!」で有名ですが、八丈島とキョンの繋がりは全く無く、何故あのギャグが出来たのか不明です。
現在は、伊豆大島と房総半島でそれぞれ動物園から逃げ出したキョンが繁殖して農作物を食い荒らし問題になっていますね。
暗くなるのが早いので、森の中の細い道を行った先にある本日の宿「ペンションブルーマーリン」へ5時前にチェックイン。
広くはないですが食事が美味しく家庭的な雰囲気のペンションでした。
翌朝の静かな森に囲まれた「ペンションブルーマーリン」。

八丈島三日目は、八丈富士とは空港を挟んで聳えるもう一つの火山「三原山」山頂を目指します。
島にはコンビニは有りませんが、代表的なスーパー「八丈ストア」に立ち寄り水を補給。
大晦日と新年の準備なのか朝から賑わっていました。

初日に通った底土港近くの八丈一周道路の脇から「三原林道」へ入って行きます。
ここから約10kmの登りです。

三原林道は、うねうねとしたつづら折りの道が続き、勾配の緩急がありますが、落石も枝葉の堆積も無く道路状態も良くとても走りやすい林道でした。
昨日の道幅の広い八丈富士登山道とは違って、すれ違う車両も登山者もなく、貸し切り状態でなんだかハイな気分になってきました。
八丈島で、静かで、自然にひたれ、雰囲気の良い林道を走れるとは全く意外でした。

途中の樹木が途切れて八丈富士が見渡せる場所。

「三原林道」から分かれて山頂へ続く道の車両通行止めのゲート脇を抜け、荒れて勾配のキツイ道を時々押し歩きしながら登ります。
ここで初めて、下ってくる登山者の方たちとすれ違い挨拶をかわしました。
自転車で登ってくる者と出会って驚かれたようです。
二箇所の鉄塔がある場所に自転車を置き、笹の茂る細い道を登ります。

すぐに風の強い三原山の山頂(標高700.9m)へ到着。三原林道入り口から約2時間15分かかりました。

八丈富士からの眺望のように広々とした市街地は見渡せませんが、火山活動で複雑に隆起した山の姿や樹木、輝く海が見渡せました。

登ってきた道を引き返し、再び三原林道へ出て起点とは反対側へ下って行きます。
途中、森のなかにある「大池小池」という名称の湖を見に歩いて行きました。
林道をずっと下り島南部の八丈一周道路へ出て、近くの「千両」という食堂へ入り天ざるを注文。
天ぷらのタネは明日菜と海老で、蕎麦も美味しいが明日菜の天ぷらが美味しい。
初日と同じく大坂トンネルを越えて、八丈島の古民家が残っている「ふるさと村」へ。
建物内へ上がると、囲炉裏端で年配の女性の方がお茶と煮たジャガイモを出してくださいました。

「大里の玉石垣」といって、古くから、海岸で拾ってきた丸い石を積み上げて石垣にした地域が有ります。
大きさが揃った丸石をきれいに積み上げた石垣の景色は凄い。

古い木造の建物の「八丈島歴史民俗資料館」へ来ました。
八丈支庁舎だった建物を改装して、八丈島のさまざまな歴史や生活に関する品々を展示してあります。

駆け足ですが「宇喜多秀家の居宅跡」へ来ました。

「宇喜多秀家」は戦国時代の武将で、豊富秀吉に仕え、関ヶ原の戦いで敗退し、八丈島に島流しにされ50年間を過ごし没した人物です。
八丈島を色々調べているうちに生涯を知り興味を持ちました。
墓所も近くにあったはずですが見落としました。
島西部の海岸沿いの道へ出て2km程走ると、溶岩が海に流れ出て固まった「南原千畳敷」という名所があります。

溶岩越しに見る八丈小島は間近に見えます。

宇喜多秀家と妻の豪姫の像が、元々の城主だった岡山の方向を向いて建てられています。
豪姫は島流しされていませんが、秀家の望郷の念が感じられます。

平地が少なく民家もまばらな八丈富士西北をぐるりと回り、八丈島一周完了。
16時前に八丈島空港まで来ました。
輪行(前後の車輪を外してまとめ、専用の袋に入れると飛行機への持ち込み可能)の準備をしてカウンターに預けるのに時間がかかりましたが、お土産を買って(名産のくさやの干物は買わず)17:20分発のANA便に無事に乗りこみ島を発ちました。
来島時のフェリーの航海時間が10時間20分かかったのに、羽田までのフライト時間は約50分間であっという間でした。
今回の旅は、ほぼ予定通りに、八丈富士と三原山の山頂へ登り、八丈島一周を走り、見たい観光スポットを巡り、温泉にも入ることが出来ました。
八丈島の魅力を充分に満喫できて、また離島の面白さを知ることができた旅でした。
フナツ記